ある日の奇跡・カラナちほー

 Discord のボイスチャットに入ると、いつもの連中が騒がしい。

 聞いていると、Souji (WAR) が Punkick (MNK) のクロークを取ろうという話をしている。連日の The Hole での xp にも疲れ気味だし、私も乗っかる!

 クロークというのはもちろん、誰でもレビテーションできるクロークである。

 WAR・PAL・MNK・ROG・CLR には必須のアイテムだが、沸かせ方がかなり特殊なために一人ではまずヤれない代物。そこで、暇な時や xp に疲れた時に助けることにしている。

 ちなみに私も去年の 4 月に取ってもらった。

 ターゲットの QM ( Quillmane ) A.K.A.〝木馬〟は South Karana の named の中でも一際目立つモブで、右クリックで Levi できるクローク Pegasus Feather Cloak を落とす。プルや移動で必須な場面も多いので、持っていない人には暇な時に一緒に取りにいこう的なアイテムになっている。

 キャンプ自体は 3 人 (クラス問わず) + メレー 1 人 (あるいはペットクラス) で出来る。レベル 40 以上あれば余裕。今や、Discord で馬鹿話をしながら今日取れればラッキーだね! という Chill なキャンプになったのだが、思い起こせば 20 年前、これは伝説級のアイテムだった。

 そもそもペガサス自体が幻のモブである。

 まさかこんな複雑なメカニズムでアイツが湧いていたなど、想像だにしない。

 偶然誰かがトリガーを引いては、悠々と飛んでいる姿に刮目、早晩キル・スティール合戦に突入していた。このゾーンにいるのはレベル 20 台がほとんどだから、レベル 30 のアイツは赤く、スペルはほぼ通らないのでドルイドやネクロのドットカイト勝負である。そこまでしてスティールするのがほぼ 残念パンツ A.K.A.〝ZP〟というのだから、まことに酷なゲームだ。

 相手はレベル 30。我々からすれば、間違っても〝死ぬような相手ではない〟

 重ねて言うが、Chill なキャンプである。

 ところ、が・・・まさかの死闘!

 ま、そのまさかは Takewo 氏視点の動画を見ればわかるのだが! ここではテキストで説明を試みる。

 

www.youtube.com

 

 では、QM のメカニズムはどんなもんだったのだろうか?

 

 

 

 QM は赤・青・緑の四角の三箇所のどれかに湧き、線上をロームしはじめる。丸はしばらく止まる場所だ。そこで、赤・青・緑の四角に一人ずつ、★にメレーを一人配置する。

 1) ★をロームしている A lioness (メスライオン) と An elephant calf (子象) を掃除する係。これが PH らしい。いっぱい沸くので一番忙しい場所

 2) 赤・青・緑担当も見かけたメスライオンと子象を念のため掃除するが、キャンプを主張する置物状態

 3) (option) 余剰人員がいれば、湧いてロームをしはじめた QM を見落としている可能性もあるので、赤・青・緑の線上を走ってメスライオンと子象を掃除

 4) そのうち三箇所の四角の何れかに QM が沸く

 全員 ZlizEQMap という外部アプリが必須である。インストールも簡単なので、このキャンプを機会にセットアップする人も多い。上記のマップが選択でき、自分がパスの線上にいるかどうかすぐにわかるし、クロークをルートしたい人は湧いた場所に素早く移動できる。

 今日は、普段 Discord で与太話をしている 5 人である。

  • Takewo 56 RNG - ★の掃除
  • Souji 56 WAR - 全経路の掃除
  • Punkick 53 MNK - 緑の四角で QM の沸き待ち <-- クローク欲しい人
  • Nasubie 45 CLR - 赤の四角で QM の沸き待ち <-- ついでに出れば
  • Nekomimi 60 CLR - 青の四角で QM の沸き待ち

 

 湧いた QM を見落としていてレンジャーがトラックで発見したことが何回かあった。レンジャーを★担当にして常時トラックをするのはいい作戦だ。

 Punkick と Takewo はこのキャンプが初めてだそうで、「これはなかなか暇なキャンプだな」とこぼしだした、それは開始から三十分ほど経った頃だった。

 いきなり Souji が叫ぶ!

「ブラザー湧いとるぞ!」

 もちろん、Brother Qwinn A.K.A.〝おっさん〟のことである。

 そういえば以前、Punkick と話していたのを思い出した。もし南カラナちほーでコイツを見かけたら、ぶっ殺してモンクのローブ Robe of the Lost Circle A.K.A.〝制服〟をゲットしようやと。

 このローブ、本来ならばクエストをして取るものなのだが、そのクエストが EQ の例に漏れず、あまりにもエグい。何がエグいかって、複数のクエストアイテムをとるのに 10 時間単位で PH を殺し続けなければならないし、それを渡すクエスNPC にも PH がいて、沸くまで 10 時間なんてかかることもあるしで、なんだかんだでヘタをするとトータル 50 時間以上かかることある糞クエ err、壮大なクエストなんだとか。

 ところが、このおっさんをぶっ殺すと結構な率で制服をドロップするという。

「もしもおぬしがわしを倒せたなら、この生ローブを渡してやってもよいぞよ」

 こういうあたり、EQ っぽくて好きだ。

 ま、ぶっ殺したほうがはるかに早い。

 それは間違いない。

問題はこのおっさん、レイドボスなのだ。

  • モンク GM なので、レベル 61 の HP 2 万。人間をやめた何か
  • 360 ダメージのクアッド攻撃
  • スペルは unresistable 以外は入らないので、Slow 不能
  • かたいタンク、クレリック数人、そのマナが 0 になる前に倒せるだけの DPS、この三点が「たまたまクインが湧いている時に揃えられるかどうか」

 当然だが、今ここにいる 5 人でやるのは不可能だ。メンツを集める必要があるが、ギルメンらがどこにいるかみてみる。The Hole に xp の 1 パーティー、あと 2 名が Kaesora、これは HS のキーキャンプだろう。

 何れも、そこに行くまでにそれなりの時間をかけているから、呼ぶにも及び腰である。お前が言えよ、いやお前が、状態に。

 そこで、Souji がチャットで募集してみた。すると・・・来るわ来るわ! 有難いことに、すぐにそれっぽい戦力が集まってしまった。

 そんなわけで、とりあえず一回やってあたりをつけてみようということで、戦ってみるものの・・・全員が一斉に攻撃したせいでスレットが安定せず、一番 DPS の高い Sensei Leafgray から沈んでいく・・・一撫でワンパン即死・・・結果、死者多数!

 おいちょと待て・・・QM キャンプのはずが、とんでもないことになったもんだ!

 気を取り直して、第二戦目。

 DPS も、MT Souji のチャージから 5 秒遅れでスタートとする。また、スレットを稼ぐ武器は禁止。

 そして、今回はちゃんと CCH を組んでみる。

 これは Chain Complete Healing のことで、EQ の伝統芸能である。

 クレリックには、Complete Healing (CH) という全回復スペルがある。どれほど HP が多くても 100% にすることができるので、ゲーム中最強の HPM になる。良くも悪くも、このゲームのバランスを決定づけているスペルの一つである。

 ただし、キャストタイムが 10 秒もかかるため、それ以上のダメージを食らう相手では間に合わない。そこで複数のクレリックが順にキャストをしていく。

 マクロはこのようなものだ。

 CH をキャストしてから決められた秒数が経過すると次の人を呼ぶ。

 呼ばれた人がキャストをし・・・これを繰り返す。

 f:id:perotanz:20210219123812p:plain

 

  • /g CCH %t    ←開始
  • /cast X      ← CH キャスト
  • /pause 30    ←3 秒待つ (100ms x 30)
  • /g next Azumino ←次の人を呼ぶ

 

 チャートにすると、こんな感じだ。

 

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 - 1 文字 1 秒。

 Cn はクレリック、T0 はタンク、c でキャスト開始、n で next、s で CH 完了、! は CH がタンクに着弾するタイミング。

 3 人だといくらポーズを伸ばしてもほとんどメディできない一方、4 人だと 10 秒以上は座れるので、確実に 1 tick、タイミングによっては 2 tick のメディができる。実用的な CCH は最低 4 人は必要ということだ。

 あの頃は 4 クレリック + 1 バード + ネクロ/メージなどの組み合わせでやっていたのを思い出した。

 

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 そんなわけで、なんとかぶっ殺せた。

 Sapporochan はマナソング係、クレリック 3 人 Shinnosuke・Azumino・Nekomimi (私) というグループである。HP 10% あたりからほぼ OOM だった。med している時間が毎回 3 秒ぐらいしかなかったので、次回やる場合は 4 人に増員したほうが安全だろう。

 ローブをゲットした Punkick も、まさかこんなことになるとは思いもよらなかったらしく。「未来の話のはずですね」とか「Damn・・・!」などとブツブツ言いながら呆然としているのだが、そんな彼を引っ張って QM のキャンプの再開である!

 しかし、順調に沸いてはいるものの・・・

 もちろん ZP、A.K.A. 残念パンツしか落とさない。

 ま、QM なんてものはこんなものだ。といいつつも ZP が、3 本目・・・4 本目・・・と増えていくごとに、このキャンプの本当の恐ろしさを思い出す。

 丸一日やっても結局取れずにお開きということなんて、何度もあった。

 例えば、Erufu (WAR) 提供の、このグロい画像・・・

 Erufu のクロークは、あまりにも EQ すぎた。

 12 枚ものパンツは残念すぎた。

 それは正に EQ だった。

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 このゲーム自身、こうした無慈悲さからのカタルシスに立脚していて、我に返ればただのダイス (RNG) であることに気づいて暗澹たる気分になることがある。しかし、あれから 20 年も経過した今どきのゲームも「ゲームを支配しているのは RNG である」というお寒い状況から脱していない。

 凄惨なガチャなどを見ていると、むしろより深刻になっている気さえする。

 1 時間、2 時間と経過していくごとに、キャンプの雲行きは怪しくなっていく。明日の予定もあるし、こういう時はエンドを決めるのは大事なことだ。AM 1:00 までやることに決まった。

「ま、今日はローブを取りに来たんだし、これはついで」

 なんて強弁など。

 すると、2 時間が経過したころだろうか。6 頭目の QM でようやくクロークを落とす!

 はー良かった良かった、そろそろ時間も時間だし、今日は気持ちよく寝れるぜ!

 そこへ Nasubie (CLR。Heihatirou の Alt) がボソり。

「え。私のぶんも、1 時までお願いしますよぉ〜」

 あと 15 分ぐらいか。

そんなの落ちるわけないし、

 1 匹みたらいいとこだろう。やるだけやって寝ようか。みたいなロスタイム扱いである。

 そして、10 分後・・・

 なにやら Nasubie が騒がしい。

「あーりがとうございます! あ――りがとうっございますっ!! う、頭がっ!」

 一同、あいつはまたぞろ Twitch のお客様の投げ銭か何かに騒いでいるのだろう。と思ったその時、一行のルートメッセージが・・・

 クローク拾ってやがるし!

 連チャン 2 枚とかありえねえ!!

 持ってやがるってレベルじゃねえぞ!!!

 私の 30 未満しか刻まれてないらしいダイスと交換しろ!

 

その後・・・

 Puriin くんの Alt の 55 MNK、Rahuresia のクロークを取りに来たら・・・

 上記同様、なかなかの渋さ。ZP を 9 枚も量産!

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 ここには写ってないけど、2 枚腐ってます・・・ 

 

それでは、ハッピーカラナちほー!