クレリックエピック その 1 ~準備編~

「クリックしてくれないか?」

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 クレリックをやっていると、こうした半ば 暗号のような依頼 がくる。

 どうやら、EverQuest 界隈では相手がクレリックに限りクリック = 蘇生〟という等式が成り立つようだ。

 

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 クレリックのエピック Water Sprinkler of Nem Ankh は、死体をターゲットして右クリックすると 96% 経験値バックの蘇生 Reviviscence ができるからだ。マナ消費が無いせいか頼むほうも躊躇が無く、まだ私の姿を見もしていないのに、つまりエピックを持っているかどうかにかかわらず

「どこそこの死体をクリックしてくれ」

 と言われる。特にエピックを持っているクレリックは〝クリッキー〟と呼ばれている。グループがワイプをした時など、

「誰かクリッキー出せるか?」

 といった形で使われる。

 レイドギルドなどワイプから立て直さなければならない機会が多いクレリックは持っていないと半人前扱いされるほどだ。

 すべてのプレイヤーに恩恵があるせいでこれほど有名なエピック武器は他に見当たらない。

 他のクラスのものは拡張と共にすぐバンクの肥やしと化したが、このエピックだけは何年も現役で活躍していたらしい。

 

 ところで、エピックのクエストはどのクラスもハードなものである。

 一朝一夕でやれるようなものではないし、そもそも限られた人しか狙うことができず、多くのボス戦はスポーン任せだからいつも唐突で、競合が多いため即座に戦力を揃えられない限りチャンスもない。アイテムトリガーで湧かせるボスもそれなりにいるため、ボス戦に失敗するとクエストの最初からやり直しになるのも痛い。こうした現実を前にすれば、中堅ギルドやレイド連合に所属していない限り普通は諦めるだろう。

 Blue サーバーで遊んでいたころのギルド Kagerou は最盛期でも全員集合して 1 グループと少し程度だったし、私はエンチャンターだったのでエピックなんて考えもしなかった。難易度も競争率もかなり高く、雲の上のような存在だったからだ。

 しかし、この頃に所属していたギルド Akatsuki ではモンクエピックはファーム状態になっていたし、ローグも死闘の末に一本だけ完成させていた。クレリックもエピックの中では簡単な部類だといわれていたので、もしかすると狙えるのでは? 慎重な私でもそう思うようになった。

 

 

 ところでこのクエストのラスボス Ragefire は、このようにただひたすら湧き待ちをする、絶望的にヒマなキャンプ だ。たとえ湧く瞬間に居合わせたところで、競合が多いので /random のサイコロ運によっては何日も続く。

 私は駄文を書くのが好きなので、キャンプ中は少しでも生産的なことをしようとこれをつらつら書き始めたのだが、そのうちキャンプそのものに暗雲が垂れ込みはじめる。クエストを最後まで終わらせない限り記事も出しようがなく、精神的にも佳境に差し掛かり、もはや何かを書く気分にすらならなくなった。

 先にエピックを完成させた Azumino メンバーの動画を作り終えると Ragefire の憤怒の炎で燃え尽きて、書きかけのまま塩漬けとなり、気がつけば丸二年も放置していた。

 その間いろんなことがあった。親しい友達らが TLP に引っ越して、私も Akatsuki から抜けたのもあって P99 で遊ばなくなった。

 そして最近、P99 とは別のエミュである TAKP で相棒のぷりん君がこそ練をしていたのでひやかしにいったら案の定はまる。

 

 

 そうして当然のようにクレリックエピックに手を付けて、ただやるのもアレだからとブログに下書きを始めたとき、ようやくこの残骸の存在に気が付いた。

 私にとって何かを書くというのは心が平穏になる作用があるのだが、その平穏を保とうとすればするほど文字数が増える。三万文字を超えるこの駄文はほぼ完成していたにも関わらずそれでもなお放り出したというのだから、余程変な心の折れ方をしたのだろう。

 難しいことは考えず、とにかくこの長文を成仏 (公開) させようじゃないか。そうやって最後の推敲を進めていくと、このキャンプがいかに過酷だったのか、今更ながら震えが来ているw

 しかし同時に、二年も寝かせたせいか、あの頃はよくもまぁこんなバカなことをしていたものだと客観視できるようにもなっている。

 今となってはほぼ価値が無い情報なのは間違いない。ただ、ある MMO のエミュサーバーが経験したアイテムの解禁はこういう雰囲気だったという歴史モノとして、一寸の価値があるかもしれない。

 路傍のクレリックの戯言にしばしお付き合いいただきたい。

ネムアンクの水撒き器とは何か。

 閑話休題、Water Sprinkler of Nem Ankh というネーミング問題である。他のクラスのエピックといえば、以下の 7 本は少なくとも武器の一種であることを名乗っている。

 

 またこの 6 本は若干ひねりはあるが、クラスに調和している。

 

 やはりクレリックの〝ネムアンクの水撒き器〟だけ浮いている。

平八郎「水芸ですね」

ねこ「早すぎたんだ……まさかこれが 伝説のアークプリースト の宴会芸を予言していたとは……」

ぷりん「そもそもネムアンクって誰やねん」

 クエストのスクリプトにこの名前に触れている箇所は見当たらないので、丁寧にクエストを完了したところで意味はわからないままだ。23 年前の当時もこのエピックを愛用していた私だが、あの頃は名前の意味なんて今以上にさっぱり。クレリック仲間同士で似たような会話をしていた気がする。

 今更ながら調べてみると、はっきりとした答えは見当たらないものの、いくつか発見があった。

 まずNem Ankhとは。アンクは RPG をやっていればよく見る単語だ。WoW でもシャーマンの蘇生の触媒が Ankh だった。ヒエログリフの石版には、

 

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 というシンボルで記されているし、ツタンカーメンの綴りにも Tut-ankh-amen ツゥツ-アンク-アメン (アメン神の生ける似姿) として見られる。これはエジプト十字とも言われるシンボルで〝生命〟という意味があり、言われてみれば確かにエピックの柄のデザインはこのシンボルが元になっている。

 

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 nem ankh で〝key of life (命の鍵)〟〝life after death (来世)〟〝eternal life (永遠の命)〟などの意味があるので、 蘇生できる武器を表現したいという意図を感じる。

 では問題の〝Water Sprinkler〟とは。

 クエストでは、水の三神教 (The Triumvirate of Water) とプラズマ流派 (The Plasmatic Priesthood) の対立が描かれている。そして、いちクレリックとして水の勢力に与する。

 水の三神教とは深淵の王 Tarew Marr、冬の守護者 E'ci、ベールに包まれた者 Povar の三つの水の神々を祀る宗教らしい。一方プラズマ流派はそれら水の勢力と対立している火の暴君 Fennin Ro を狂信している。

 と、ここまでで科学に覚えのある人はピンと来るだろう。これらは水の固体・液体・気体、プラズマは火の実体というように、四形態からなる 物質の相 から来ているようだ。

 クエストでは順に氷のオーブ (固体)、水のオーブ (液体)蒸気のオーブ (気体) を集めて三神のオーブに合体させたものを水の平原 (Plane of Water) から召喚した水の化身 (Avatar of Water) に渡すことにより、本エピックは完成する。

 改めて言うまでもなく、このクエストは水がテーマになっている。

 西洋の聖職者に水といえば聖水 (holy water) だ。

 それっぽいキーワードで検索をしてみると、キリスト教の司祭が聖水で祝福をしている画像がずらずらと出てくる。彼らが手にしているのは アスペルギルム (Aspergillum) と呼ばれる聖具で、キリスト教圏では日常的なものらしい。すると Water Sprinkler とは、聖水を撒くあの 1HB がモデルになっているようだ。エピックの鉄球部分をよく見ると水色のパーティクルが動いていて、祝福が駄々洩れである。でもそのまま Aspergillum of 〜 と言えば特定の宗教色が濃くなってしまうので、Water Sprinkler of 〜 とぼかした表現にしたのかもしれない。

 この道具を売っている教会向けの サプライ通販サイト を見ると、その商品説明に 〝holy water sprinkler〟という注釈がある。やはりそういう呼ばれ方もするようだ。もう少し調べ見てみようと画像検索をかけてみると、どういうわけかモーニングスター (Morning Star) などといった物騒なものが出てくる。これは伝統的な武器の一種で、先端の周りにトゲがついている鈍器を指す。そしてこれの別名が Holy Water Sprinkler だという。

 どうしてこんな物騒なものが聖水を振りまく道具

 限られた知識で推測してみる。中世の聖職者の中には戦士を兼ねる者もいて、血を見るべきではないので戦闘では鈍器を使っていた。時代とともに武器は進化し、殺傷能力を高めるべく鋭利なスパイクが付けられた。それを敵の頭に振り下ろすと、噴水のようにまき散る。聖水ではないものが……

「余計に血みとるやないかい!」

 そういうツッコミは無粋。

 この武器はそうした理由で Holy Water Sprinkler という名前が付けられた。

 いくらなんでもこれではあまりにもブラックジョークに過ぎるから、都市伝説かなんかでは。しかし、英国の武器防具博物館に Holy Water Sprinkler が 掲載 されている。

 どうやら史実のようだ。日本に劣らず中世ヨーロッパもなかなかやりおる。

 蘇生を表現するためのアンク、聖職者の歴史、聖具アスペルギルム、これらを掛け合わせるというクレリック・エピックの仕様が出来て、水が主題なら火を敵に設定して……と逆算でクエストが書かれたのかもしれない。

 それにしても、キリスト教圏であればこの名前もストレートなものなのだろうが、身近な存在ではない我々には皆目見当がつかない。2000 年の当時のインターネットは今とは比較にならないほど小さなものだったから、こうしたフレーバーが込められていたことなど我々は知るすべもなく、これってどういう意味なのかなぁとモヤモヤしていた思い出がある。

三つの水のオーブを揃えて世界を救え!

 このクエストを一言で表せば、つまりそういうことなのだが。

 なんの脈絡もなくいきなり世界系はいりましたー! ノーラス存亡を賭けた壮大なミッションである!

 ということにしておく。

 

 Project1999 の Green サーバーにエピックが導入されたのは 2021 年 4 月。

 この時私は幕張で猛烈に忙しいイベントをやっていてゲームどころではなかった。しかし聞くところによれば、各地のエピック関連のキャンプはそれはもうエグいなんて通り越してワロスな状況だったそうな。それこそ、

「キャンプってレベルじゃねえぞ!」

 という勢いで、クレリックも例に漏れず Sol-A のあの場所なんてすし詰めだったそーな……。

 幕張のお祭り生活から帰還したので、社会復帰すべく Sol-B で軽く残業など。するとどこかの可哀そうな noob が蘇生依頼を ooc で叫んでいて、しばらく誰も答えない。私はできるだけ蘇生依頼は受けたい出たがりクレリックなので、自分以外にいないかと /who cleric してみる。

 すると、高レベルのクレリックがズラリ。

私「珍しいな。なんでこんなにクレリックおんの」

ぷりん「エピックじゃないの?」

 そーいえば、エピックが導入されたんだった。

 ヤツらは全員が最深部 Naggy 会長の寝室に陣取っている。我々とヤツらのあいだには Fire Giant の軍勢という壁があるのだ。

 

 

 当然その辺のイヌとかクモとかチンピラにぶっ殺された noob の蘇生依頼なんて、彼らも相手にしようがない。

 まぁ、少なくともこの時点ではエピックなんぞ取るつもりもなかったのだが、こうして改めてグロすぎる /who をまざまざと見せつけられると、その競争率には得も言えぬ寒気がしたものだった。

 しかもヤツらはここまで来るための 準備 を万事整えてきている。ざっくりと言えばこういうものだ。

  • 忍耐度・低 - Lake Rathetear の水中でレアスポーンの Lord Bergurgle をキャンプ。ソロ
  • 難易度・低 - Sol-C の a Seeker を殺す。1 グループ必要
  • 忍耐度・低 - Sol-A のレアスポーンの Lord Gimblox をキャンプ。ソロ
  • 難易度・中 - Burning Woods の Ixiblat Fer を殺す。2 グループ必要。アイテムトリガーのため失敗したら振り出しに戻る
  • 難易度・高 - Chardok の Overking Bathezid を殺す。2 グループ必要
  • ↑ここまでが準備
  • 忍耐度・ - 最終決戦。Sol-B の Zordak Ragefire を殺す。2 グループ必要

 

 ダルいソロキャンプ x 2、楽勝なボス x 1、それなりの難易度のボス x 2。

 それらを終えてから最終決戦に挑む。そのラスボス〝Zordak Ragefire〟が最大の問題である。他のエピックよりかは遥かにマシだが、それでも 16 ~ 32 時間のスポーンタイマー、いいやそれだけであればまだいい。

 競合が多い というのはどうしようもない。

 というのもクレリックやや特殊なクラスで、ゲームバランスを決定するスペル Complete Healing を持っているがゆえにどこか税金みたいな扱いだから、絶対的な数が多い。

 長いリスポーンタイマーにグロい /who と、このおっさんの湧き待ちがもう本当にどうしようもないほどボトルネックになっている。

 これはあかんやつだと早々に見て見ぬふりを決めた。

 

 それから一ヶ月ほどが経過した、その悟りも冷めやらぬ 5 月末。

 サブキャラのメージで小銭を稼ごうと Sol-A でマイニングをしていた。ふと /who をしてみるとゾーンには私一人だけ……

 おおっと、これは Gimblox チャンス?!

ーーいいや、ちょっとまて。

 と我に返る。

ーーいいか、これは ノーラスの罠 だ。最後にあからさまなボトルネックが仕込まれているのは先刻承知。こんな見え透いた罠にハマるバカがどこにいる? その手には乗らん!!

 ともあれ、

ーーま、EQ は〝いつ何が起きるかわからない〟もんだからから、準備だけ、そう準備だけだからね、やれるときに淡々と進めておいても害はないしね。

 なーんて適当に理由をこねながら

私のエピックの旅は突然はじまった。

 

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 ・・・

 ・・・・

 ・・・・・・・(・x・;;

 っておい、あんの野郎出てきません!

 六時間もやって、何の成果も得られませんでした! そういえば king を何匹かやって Scepter of Flame が出たかな……トンネルで 25 円 のワゴンセール。もちろんさっぱり売れないガラクタなのでベンダートラッシュちゃりーん。そろそろ寝ます……などとギルドチャットでブツブツ言っていると、

「赤いの湧いてるよ。Neko さんやる?」

 と、クレリック仲間の Azumino メンバー。

 初っ端の多分一番ダルいキャンプ Lord Bergurgle's Crown「予備 (謎)」を持っているらしい。そのパートをもう終わらせているので、「予備 (謎)」をくれるそうな!

 ええ、やりますとも! と現場へ直行。

 ところで、予備とは()

 後々聞いてみると、Nasu ちゃんが Azu さんに王冠を譲ったので、自分も誰かに譲ろうと取っておいたそうな……w 律儀というかまじめと思ったらまれにドジっ子だしこの人物は抜かりない。

 

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 いやがりました、赤いやつ。

 王冠は NO DROP なので、まず Azu さんが渡してスクリプトが始まる。そばに Natasha が湧いて有無を言わさず赤いおっさんに襲いかかる。Natasha が最後の一撃 (slain) を取ってしまうと死体が消えてしまうので、Natasha は CC しておく必要がある。ここでは Azu さんが root をしているあいだに私が赤いやつを離しつつぶっ殺す。すると火エレが湧くのでそれもぶっ殺して Damaged Goblin Crown をゲット。

 root している Natasha に atone をして記憶を消してから、Damaged Goblin Crown を渡す。すると Ornate Sea Shell をくれる。

 Azu さんのおかげで、初っ端のダルいところが一瞬で終わる。これはもう Gimblox を頑張るしかない。とにもかくにもクエストを先に進めるとしよう。

 そう、伝説のあの場所、通称秘密基地へ……。

 

 このクエストには中心となる舞台がある。20 年前にこれをやった人にとって、ここは思い出深い場所だろう。

 

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 Timorous Deep の洋上は南に浮かぶ岩島。二重の水中トンネルを抜けると非日常的な景色が広がる。クレリックドルイド、モンクなど信心深い連中のエピックの舞台として設定されている荘厳な場所だ。

 そのはず、あの伝説のクレリック Sinzan もきっとここに来たに違いない。

 そして藪から棒に

「ここでおしっこしてもいいのかな?」

 などといった新たな伝説を打ち立てたのだろう。

「私はあなたに期待していましたよ。 水があなたの来訪を告げていました。 私は水の三神教の大祭司オマット・バストシーです。 この旅館の静かな孤独をお気軽にお楽しみください」

 シレっと地元民のような顔をしているオマット氏だが、ちょっと待てよ。Kunark 導入直後なつかしさあまりあんたに挨拶に来たけど、もぬけの殻だったんだけど?

 恐らく S●E も Kunark リリースにエピックを含めたかったのだろうが、間に合わなかったんだろうな。

 中央にはこうした趣の East Common でよく見られるプレハブ小屋 err 瀟洒な旅籠が佇んでいる。

 貝殻を渡してサンゴの彫像 Coral Statue of Tarew をもらう。

 

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 これの続きは Sol-C のボス戦になるので、ギルドの週末エピックイベントにでも便乗させてもらうことにする。

 次の日は Gimblox の続き。四時間ほどが経っただろうか。見てくれこの イケメン を……。

 

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 なかなかのアレなキャンプだったが、Lord Gimblox's Signet Ring  ゲット。Azu さん三時間、Nasu ちゃん六時間とのことだったので、十時間かかった私は運が悪かったらしい。

 とまぁ、ここまではまだよかった。

 その後、メージで小銭稼ぎのマイニングをやりはじめた途端に湧きやがる。

 

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 私も Azu さんの真似をして予備など()

 ……と思ったが。この ring で MQ を始めると、そのキャラは最終アイテムである Shimmering Pearl を受け取ることになる。今ではそれもアリかもしれないが、この時のサーバールールは〝クレリックが Pearl を渡すこと〟となっていたので、ただのゴミだなぁと思いながらも NO DROP かつ LORE の Ring を拾っておいた。

 のだが……。

 

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 二匹目は地面で腐る。そうしてほぼ連続で三匹もレア・イケメンをぶっ殺す羽目に。

 私の眼には、この憎らしい半ケツがどこかで

「ほおら拾ってみろゴブよー」

 と挑発しているように見えてくる。そして、すべてのノーラシアンの魂に刻まれているあの真理が否が応でも引きずり出される。

求めるべからず、さらば与えられん

 ほしい時こそ出ない、むしろ無関心なときほど出まくるのだから!

 そう、敬虔なノーラシアンは 無欲でなければならない のだ。

 ここで小銭稼ぎをしていると、やはりこのゴブリンを求めてくる可哀そうなクレリックが来る。そして Gimblox だけキャンプしていいか? という tell から、お互いヒマなことをしているので、なかなか湧かないといったボヤキを聞いてやることもしばしば。

 例えばこの人にはついポロリと

「今日二回見たよ」

 と口を滑らせると

 

 

「自分は三日やってるんだけど……」

 と、前言を撤回したくなるほど悲惨な人だった。そういう経験をしているからか、

「探すと出ないんだけど、どうでもいい時には出まくるんだよなぁ」

 というエバークエストの核心に到達しちゃってるw

 

 とはいえ、何も始まっていないこんな序盤で愚にもつかない悪態なんて空しくなるだけだ。気を取り直してやれることからやっていこう。

 後にこの真理が満を持して逆襲してくることを、この時の私はまだ知らない。

Sol-C のおっさん -- A Plasmatic Priest

 ちょうどモンクエピックの Eejag をぶっ殺すらしいので、会場の Sol-C もすぐそばだしそのままみんなで轢き殺してもらおう。

 3F の小部屋の入って左側にスポーンする a seeker。330, 40 付近。ゲーム内時間 (/time) で午前 9 時に湧いて午後 7 時にデスポーンする。渡すとアグロするので、クレリック本人がゾーンまで引く場合は念のため SoM などフルバフをしておく。また DA もアップさせておく。

 

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 この裏切り者にサンゴの彫像を渡してゾーンラインに遁走、そこに待機しているレイドフォースに焼き殺してもらうという寸法。周囲の Sol-C クエスNPC はファクションが異なるためアシストは一切しない。

 A Plasmatic Priest はレベル 55、HP 13k。クレリック・エピック四ボスの中でヤツは 最弱 である。CH さえ止めればどうということはない雑魚だ。

 思えば Project1999 では一時期キャスタータイプのモブの HP が四割を割るとゲートするという WTF !??! なバグが発生していた時期があった。Sebilis みたいな高レベルゾーンの話ではない。クラッシュボーンやナジェナみたいな noob エリアですら例外なく、だ。そのせいで、大量のモブを引き連れて初心者パーティーをワイプさせつつ、かろうじて生還した奴がゾーンにトレインしては関係ない奴らを地獄に陥れる……! こんなワロスなバグに半年も耐えてきた我々である。

 訓練は吐くほどやってきた。

 そろそろ来る……ピキーン!

 と (頭の中で) ニュータイプ音が鳴り響く。

 こんなオッサンごときの CH を止めるなぞ造作もない。

 ぴきーん!

 

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 このおっさんから血に染まったプラズマ流派のローブ Blood Soaked Plasmatic Priest Robe を追いはぎする。これを秘密基地のオマット氏に渡して氷のオーブ Orb of Frozen Water を貰う。

 直後に家の中に Natasha がスポーンするので、Lord Gimblox's Signet Ring を渡すと Shell (2番目) がもらえる。

 これで Phase 1 が終わり。

 次の Phase 2 では中ボス x 2 をやる。

火エレ -- Ixiblat Fer

 Burning Woods の Ixiblat Fer は、レベル 62、HP 32k のファイアーエレメンタルである。

 見た目は、そう EQ ではおなじみの〝ただ雑魚を巨大化させただけ〟というアレだ。

 Naxot Deepwater に Shell (2番目) を渡すことでスポーンさせる。デスポーンまで一時間弱はあるらしいので、数回は再挑戦できるようだ。

 もし失敗してしまうと渡したアイテムは消えたままになるためクエストの頭からやり直しになるという無慈悲さ、こういうあたり流石エバークエストというだけのことはある。

 スネアは入るので、バードやドルイドがカイトしながらペットで削る。その間スローが入れば CCH も不要な雑魚になる。ただしスローは 60 付近のエンチャンターかシャーマンでないと入らないので注意が必要だ。

 

 

 さて、この火エレを湧かせるとき Naxot に Shell を渡すのだが、引き換えにもらう Message to Natasha は Page と同じ見た目がぼろい紙なので間違ってデストロイしないように注意。火エレからは Sceptre of Ixiblat Fer を拾う。

サーナック -- Overking Bathezid

 次は、準備系では最後のボス Overking である。

 コイツに関しては難易度が一番高いものの、火エレと違ってトリガーアイテムがないので何度でも挑戦が可能。気分的には遥かに楽なフェーズ だ。

 目的の Overking の部屋は Chardok 最深部なので、まじめに足で移動しようとするとゆうに一時間はかかるだろう。

 途中の Harbarist がネクロマンサーのエピックパートなのと、別の部屋にいる Prince もエンチャンターエピックなのでレイドのモチベはそれなりにあるのだろうが、それにしてもこのダンジョンは人気がない。

 ただし、ダルい移動に関しては CotH で大部分をバイパスできる。ロックドア先の図書館入口の欄干脇の隙間 (ここ)

 


 がセーフスポットとして知られているので、CotH を持っていてかつファクション持ちの優しいメージが一人いればこの場所にレイドを召喚できる

「こんなこともあろうかと、念のため稼いでたんだよね」

 そうシレっと言っているぷりん君だが、Droga でのファクショングラインドはなかなかの試練だっただろう。ファクションさえ持っていれば完全にフリーパスになる。ただし、そのメージをここに埋めるには上に見えている施錠されたドアをローグで開錠する必要がある。

 

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 レイド全体への注意として、この SS の右奥のドアの右側に落とし穴があり、Overking 部屋にボトリと落ちてしまうので全員 DMF は徹底しておく。

 レイドに慣れていない人がいる場合は殺しながら移動したほうが早い。というのは、人数が多くなればなるほどインビジが解ける可能性が高くなる。インビジの移動は全員がインビジアイテム (Ring of Shadows か Larrikan's Mask) を持っていることが前提で、それが無い以上必ず誰かが死ぬことになり余計に時間を食うだろう。

 こうしたインスタントなインビジアイテムは解ける警告が出てからクリックしてもアグロしないため、インビジができる・できないにかかわらず全員に有効だ。

 

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 レイドのキャンプ場所は、この SS のようにキング部屋すぐ上の廊下になる。後ろに下がりすぎて後方の部屋のローマーがアグロしてワイプをしたことがあったので、廊下中央から後ろには行かないようにレイドに周知しておく。

 さて、この廊下を通るローマー二体をなんとかしてから Overking の取り巻きをブレークしていく手順なのだが……。

 ここの難易度を高くしているのは雑魚の リポップが 12 分 という DPS チェックがあり、一定以上のレイド DPS がないと突破できないようになっていることだろう。ただしエンチャンターが二人いればローマーをチャームしてリスポーンを封じることでかなり安全にすることができる。チャームペットの出力は一匹あたりメレー DPS 二、三人分に相当するので、レイド DPS も格段に上がる。その上 Overking は CH があるので、Mana Sieve でマナを抜くという重要な仕事もある。

 そんなわけで、エンチャンターはほぼ必須だ。この時も Nemu さんと Waya さんが居なければこれほどうまくはいかなかっただろう。

 プルは Rafuresia (ぷりん君のモンク) が Stalking Probe による鮮やかな目玉プルで取り巻きを 1 プル。CotH ったりプルしたりと大忙しのぷりん君は完全なヒーローユニット回だった。

 この廊下から右に折れた先は下り坂になっているので、坂の上のほうでタンクし、ヒーラーやキャスターはこの角の影にはいって AoE を避ける。

 さて、ワイプはしたものの無事にキルできた我々。エピックのクエストアイテムである Singed Scroll は、Azu さんは前回取っていた。持っていないのは私と Shin ちゃんだったが、今回 Shin ちゃんが譲ってくれた。

 そして、Message to Natasha / Sceptre / Scroll の三つを握りしめて秘密基地に戻る。Sceptre と Scroll を Omat に渡すと、水のオーブ Orb of Clear Water が貰える。これで Phase 2 が完了。

 同時に家の中に Natasha が湧くので、Message to Natasha を渡して煌めく真珠 Shimmering Pearl を貰う。

 

 これがあの伝説の真珠か……長い道のりを来たものだ……。

 この時の心境は、その程度のものだった。

 今思えば、バカ丸出しである。

本当の闘いはこれからだというのに。

 

 その 2 ~憤怒の炎編~ に続く